経絡治療のすすめ
日本伝統鍼灸医学の診断から治療までを、システィマチックに、しかも効果あらしめているのが「経絡治療」です。しかし、独学は難しく、特に脈診習得は三十年かかるといわれています。
そうだろうか。疑問を持ちながら独学でこれに挑戦した、苦心の奮闘記です。治療家や治療を受ける人にとって、東洋医学、特に日本伝統鍼灸とはどういうものなのかが具体的に分かる本といえます。
鍼灸師で、この本を読んで経絡治療に入った人は多いのですが、一般の人が本屋で見かけ、ついに鍼灸師になったというのを聞いて驚いたことがあります。
初版から数えて三十四年、二十二刷を記録しました。出版社による宣伝文は下記のとおりです。
「本書を読めば脈診は決して難しくないことがわかる。本書はそれまで口伝としてしか示されなかった脈診の実際を、写真によって誰にでもわかるように述べた、新しい経絡治療の名著。」
「超旋刺と臨床のツボー鍼灸問わずがたり」「首藤傳明症例集―鍼灸臨床50年の物語」も刊行されました。
要約
第一編 諸言
経絡治療を学習するようになった動機、その心構え、参考文献について述べる。
第二編 やさしい脈診
経絡治療の難しさは脈診にある。その点を写真と図表で誰でも追試できるように詳述する。
第三編 四診法
望診、聞診、問診、切診という東洋医学の診断法をやさしく述べる。
第四篇 証の決定
効果的な治療に欠かせない「証」を決める要領を述べる。
第五編 治療
鍼灸治療に必要な手順を初心者に向けての「天の部」と中級者向けの「地の部」とに分けて述べる。
効かせるための要領、治験例をあげる。
第六編 病因
東洋医学における病気の原因(内因・外因・不内外因)について述べる。内因とは現代でいうストレスにあたる。
第七編 病症
身体各部に現れる症状によって治療すべき経絡を推定し、証を決める手助けとする。
第八編 終章
鍼の学と術と、そして行があって鍼は上達する。治療家の心が問われる。
首藤傳明症例集 鍼灸臨床50年の物語
序文
本書は、鍼灸を目指す学生さんや開業して胸をはずませている鍼灸師にとっての道しるべを目指している。鍼灸治療は楽しいものと思いますか。あるいは苦しいものでしょうか。病院で治らなかった難病が先生の鍼で治りました。合掌された時の高揚感。治療に失敗し、落ち込んだ時の悲哀。長い臨床生活には躁の時もうつの時もある。鍼灸には陰陽という思想がある。陰陽は天地の道なり。例外のない天下の法則なのだ。陰陽は不変ではない。無常、いつも変化しているということである。下降があれば必ず上昇がある。だから、下降しても、落ち込むことはない。必ずいいことがあると信じることだ、上昇した時こそ油断がならぬ。有頂天になっている場合ではない。気を引き締める。アップダウンを繰り返しながら、身につけた信条だ。浮きつ沈みつの臨床で得た治療のコツを語る。秘伝といえるほどのものではないが、必ずお役に立てると思う。物語風の仕立て、お楽しみいただきたい。
これからの道程、私が経験した症状または病気について、症例を挙げてお話しする。診察から治療に至る道筋、問診、切診、選穴、刺入法、灸の数、治療の方針、回復期間、養生法などの説明。西洋医学的な状態の説明、必要ならば東洋医学からの解釈、患者さんがいかに納得されるか、工夫する。私の鍼灸治療室での技術では及ばない時は、西洋医学の先生を紹介する。適当な病院の適当な診療科目の担当医師に紹介状を書く。症例の報告というのは読んでいて、たいてい退屈する。物語風にはできないものか。不遜なというお叱りを覚悟の上で試みる。竜頭蛇尾の恐れなきにしも!老いの一徹が通るものか、見ものである。
もとより非才の身、万病を治せるはずがない。本書では比較的、いい成績の症例を扱っている。うまくない症例も他の先生なら治せるものも多い。他の文献を参考に研究してほしい。鍼灸には無限の可能性がある。みなさんの才能を磨いて掘り出していただきたい。最後のページまでさっと目を通されることを希望する。その後、臨床で迷った時に、必要なページを開く。常に治療室の机の片隅に置いていただければ、まことにありがたい。付録として『繁栄の法則を求めてー開業当初の苦心記―』が顔を出す。かつて『医道の日本』誌に連載され、読者の共感を得たという読み物、古傷に触れられるようで、いい感じではない。編集部の皆さん方がぜひ載せたいという意向に従った。発奮の種になるかどうか。それでは、ぼつぼつどうぞ……。
超旋刺と臨床のツボー鍼灸問わずがたり
序文
序文 私の前著「経絡治療のすすめ」が出版されて四半世紀を経た。それは独学による経絡治療会得までの総括であり、いわば練習ノートであった。その後、鍼灸の考え方や技法についていろいろと発表してきた。九州の片田舎で細々と臨床をこなす者の真剣な営みであったが、この辺でこれらをまとめることにする。特に臨床に自信のない、迷っている若い鍼灸師にとって、私の試行錯誤は参考になるだろうと思う。最高の職業に就いている皆さんの夢を壊さないようにしたい。最後のご奉公全力をあげる。
本書の構成 鍼灸古典の解釈から「こころは五臓にあり」という考えかたと実践法。よく使うツボの使い方、私が開発した超旋刺®のこと、流行るということ、など。
翻訳本
下記2冊は英訳本です。ドイツ語訳、ポルトガル語訳も出版されています。症例集は翻訳作業中。
Japanese Classical Acupuncture: Introduction to Meridian Therapy
Finding Effective Acupuncture Points